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INTERVIEW
 
   
渡 氏
ポジティブに取り組めば
環境は経営の切り札

東芝社長 西田 厚聰 氏

西田 厚聰 氏
1970年東京大学大学院法学政治学研究科修士課程修了。75年東芝入社。東芝アメリカ情報システム社社長、パソコン事業部長などを経て、2005年6月から取締役代表執行役社長。
社長就任後、ダイナミックな巨額投資を次々に決断し話題に。
 
Q:東芝の経営において、環境をどう位置づけているのでしょう
 
 私は常々、東芝を「地球内企業」だと言っています。造語で辞書には載っていない言葉です。地球の中で活動する企業ですから、もちろん私も含めて社員一人ひとりが地球環境を意識しながら行動するのは当然のことなのです。
  限られた資源、限度ある自然の浄化能力、そういったものをすべての社員が意識しながら企業活動をすることで、持続可能な企業として生き続けることができます。その一環として東芝は2004年1月に国連グローバルコンパクトに参加、企業行動の普遍的な基準としています。
  環境問題を、企業活動を制約するネガティブ・後ろ向きの問題ととらえるむきもあるようです。たしかに、いろいろ出てくる新しい環境規制や法律などをただ後追いで対応するだけでは、環境はネガティブな問題ということになるかもしれませんが、東芝はポジティブに取り組むべき活動と位置づけています。
  環境問題の克服には絶えざるイノベーションが必要です。開発、生産、営業などの各プロセスでイノベーションを喚起し、単なる足し合わせではなく、それらの相乗効果で非常に大きな効果を生み出します。
  環境分野での大きなイノベーションは、脱コモディティ分野の製品はもちろん、成熟したコモディティ分野の製品においても競争力を強化する有力な手段となります。
  環境配慮製品に対する消費者の感度向上も相まって、環境分野へのポジティブな取り組み、各プロセスでのイノベーション、そしてそれらの相乗効果の発揮は、経営に直結する重要課題です。
 
環境と性能は両立する
「ファクターT」で評価
 
市場シェアか利益か、品質かコストかなど、二律背反の経営課題でありどちらをとるか、という問われ方をよくします。環境か性能か、などというのも同じです。
  これらを二律背反の問題ととらえることは間違っています。環境も性能もということが社会から求められているのであり、それに応えることが我々の責務なのです。そのためにはイノベーションが大きな原動力になります。
  アジアのライバルはハングリー精神をもって果敢に活動しています。我々のハングリー精神は薄らいでいる。それに代わるものとしてセンス・オブ・アージェンシー、切迫感・危機感といっていいかもしれません、そういったもので事業に、環境分野に立ち向かい、二律背反を乗り越えなければなりません。
  製品の中に、豊かな価値創造と環境負荷の低減を両方とも求めるわけですが、その程度を定量的に評価するために、東芝では「ファクターT」と呼ぶ指標を用いています。
  最初は社員に戸惑いもあったようですが、ファクターTという、全社共通の環境についての「言葉」ができたのは非常に意味がありました。
  今では製品について説明するときにファクターTの算出は当たり前であり、製品の重要な指標として定着しています。ファクターTという定量評価の指数を介し、ライフサイクルを考えて環境と性能を両立させたものづくりをしているのです。
  その成果のひとつとして、東芝の主要製品をライフサイクルで見た場合、2004年度に出荷した製品は2000年度の製品とくらべ320万トンのCO2を削減しています。これは100万キロワット級のLNG火力発電所が排出する1年分のCO2を減らした勘定になります。
 
Q:最近、ウエスチングハウスの原子力部門を買収されましたが
 
 CO2削減ということでは相当の切迫感を持っています。省エネは一番の柱ですが、現状ではどんどんエネルギー使用量が減ると想定するほど楽観的にはなれません。
  石油はいつまでもつかわかりませんし、埋蔵量の多い石炭は炭素の塊ですからそのままでは、石炭火力は発電量あたりのCO2排出量が多くなる。風力による大規模発電は、風がよく吹き風車を設置できる適地となると場所も限られますし、コストも高いです。
  ウエスチングハウスの原子力部門の買収は、そうしたことを見通しての決断です。現状をみるとき原子力は日本の発電量の3割を占めていますし、CO2問題を考えたとき、これからもエネルギー供給の大きな柱を担うとみるのが現実的です。
  だとすれば、高い安全性・信頼性への努力のもとで原子力を活用するのは妥当な選択です。沸騰水型の原子炉と加圧水型の原子炉の両方の技術を持つことで、互いの技術が相互交流することにより、シナジー効果が生まれると期待しています。
 
環境分野のイノベーション
支えるのは社員一人ひとり


Q:社員の環境意識をどのように喚起しているのですか
 
渡 氏
東芝社長
西田厚聰 氏
環境分野のイノベーションを積極的に進めたいと言いましたが、そのためには社員一人ひとりの環境意識が非常に大切です。
  何か特別なときにだけ、環境について考えるのではなく、日々の仕事をこなす中で無意識にできている??こうした環境意識を持ってもらうため、おりあるたびに環境についての注意を喚起しています。
  全社共通の環境ビジョンを持つことは社外へのメッセージであるだけでなく社員全員の環境意識を高める役割も持っています。私は期初のメッセージを発するとき、環境に触れます。工場、生産技術センター、研究開発センターなどの現場でも環境について問いかけます。
  さらに、東芝グループの事業ごとの環境へのパフォーマンスについて評価する「環境経営度評価システム」という制度があります。環境方針・システム、法令遵守・リスク管理、事業プロセス、製品・サービス、情報開示、コミュニケーションという6分野67項目について定量的に評価します。
  これらの評価と分析結果を経営層や事業経営責任者にフィードバックして翌年の定量評価の目標を立てるというPDCA(Plan-Do-Check-Action)サイクルを回していますが、これは相当に有効です。こうした活動を通じて、環境意識の日常化は確実に進んでいると思います。
  メーカーとして技術や製品に環境での成果はいろいろありますが、東芝の環境で一番の自慢は「人」だと自負しています。すべては人から発しているのですから。
 
(聞き手は日経エコロジー・山岡則夫)
 
 
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